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2020年7月18日土曜日

次世代加速器の記事 (雑感)

昨年度読んだSFでとても面白かったのが、中国のSF作家劉慈欣が書いた「三体」だった。三体は三部作で、第一作の三体 I は前評判も高く新聞の広告とかにも結構大きく載っていたので興味を持って読んでみたが、とても面白いSFだった。現在は第二部の翻訳が6月に出たところだ。第一部を読み終わった時点では日本語訳はまだ出ていなかったので、英語翻訳版 (The dark forest) を購入して春先くらいに読んだ。一部目に続いて壮大なスケールで展開されるお話だった。今は、第三部(Death's end) を暇を見つけて読んでいる。第二部の日本語翻訳版も読んでみたい。

三体のストーリーの中で、「人類の科学の進歩」が重要なキーワードになっている。その中でも「人類の基礎科学のレベルが上がること」を危惧した三体星人により、量子物理学で使われる加速器の結果をでたらめにして無効化してしまう「智子(sophon)」が地球に送り込まれる。作品では、物理学などの基礎科学が文明の発展にいかに重要か、それをめぐる地球人と三体人との攻防が描かれている。なんとなく中国の人たちの科学感や期待が感じられるような気がする設定だと思った。

科学技術レベルが国の覇権にとって重要なのは確かだ。そして、現実世界では基礎科学でも欧米や日本が中国にいづれ追い付かれ追い越されていくであろうことを予感させるような話が出てきている。

先端科学 中国先行に危惧
欧米「日本で次世代加速器建設を」 8000億円、日本は負担懸念
日本経済新聞 朝刊

生命科学の分野でも日本は中国に急速に追い上げられ、一部ではすでに劣後しつつあるのではないかと思う。もちろん基礎科学は文化的な側面もあり、これまで培われてきた欧米の科学研究の風土がなくなってしまうわけではないと思う。しかし、あらゆる分野で覇権を握ろうという意思があり、予算的なバックアップをしている中国に、今後はいろんな分野で追いつき追い越されていくのかもしれない。

日本で科学技術に関係した職についており、日本の科学研究の上での地位が低下していくことに、危機感と寂しさを感じるのは否定できない。だが、一方では、こうした地位の逆転は今までにも度々起こってきたことなのだろうし、人類の科学そのものの停滞を意味するわけではないだろう。日本はただ沈んでいくのではなく、これまでの遺産を生かしながら、科学研究の世界でそれなりの地位を守っていくことを真剣に考えないといけない時期かもしれない。

2019年1月30日水曜日

illuminaがPacBioを買収、の記事を読んだ時の話

数日前、illuminaがPacific Biosciencesを買収するという記事が居室で話題になった。Nature Biotechnologyの記事を見つけてきた人がいてそれを見せてもらった。ゲノムの方で覇権を握り続けるための措置なのだろうか。今いる研究室でもPacBioでシークエンスをしている。まだ論文を出せていないが、アブラナ科植物のde novo アセンブルでpacbioを使うと、HiSeqのショートリードのみの場合よりもN50が大幅に長くなった。非モデル生物や育種系の需要では、しばらくは、illuminaが提供するショートリード+ロングリードでの新規ゲノム解析が定石の方法となるのだろうか?

ここからはilluminaの話とは別になるが、この記事を見つけてきた人が、ふとGoogle翻訳を使って記事を訳したらどうなるのかを試してみた。結果を見てびっくりした。日本語としてかなり読みやすい訳になっていたからだ。前々からGoogle翻訳の能力が上がっていることには気付いていたが、こんなにいい感じに機械が翻訳できることに単純に驚いた。

学部生には、どこの大学でも「科学英語」のような授業があるし、自分も学生の時それで論文を読んだり英語の文章を読んだりした記憶がある。一般科目の方には普通の英語の講義もたくさんあった。そこでは単純に単語を覚えたり、和訳したりする課題もたくさんあった。でも、これだけ進んだ自動翻訳の技術を見せられたら、科目としての英語も変化しないといけないんじゃないかという気がしてくる。どう変えるか、まで答えられるほどの知識も知恵もないが、課題解決型、英語でなにがしかのアクションが実際にできることそのものが評価の対象になるのではと感じる。その過程では、Google翻訳などのような、昔ならサボるための道具として忌避されていたツールを逆に使いこなすことが評価されるようになるのかもなと思った。素人考えなので実際はわからないが。