tRNA : 転移RNA、またはトランスファーRNAは、翻訳の過程でアダプターとして働く小型のRNA分子で、だいたい100bpに満たないくらいの長さがある。翻訳の過程で遺伝暗号の解読を担っている。tRNAは転写されたのちに折りたたまれてクローバー葉構造(cloverleaf structure)の二次構造をとる。この二次構造は分子内塩基対形成(intramolecular base pairing)によって、1本のポリヌクレオチド鎖から形成される。鎖の異なる部分の間で塩基対ができ、Dアーム、アンチコドンアーム、Tアーム、受容アームと可変ループなどが形成される。
tRFs: 最近、tRNAの部分的な配列が小分子RNAとして大量に存在していることを報告する論文が複数の生物種で報告されている。このようなtRNA由来の断片は、tRNA-derived fragments (tRFs) と呼ばれる。tRNAの半分くらいの長さがある場合、tRNA halves という呼び方をしている場合もあるようだ。tRFsの機能的意義ははっきりしないが、遺伝子発現の調節、トランスポゾンの抑制などが提唱されている。がん細胞の増殖や抑制にも関連していると考える研究者もいる。機能を持つ場合はAGOにロードされて働く場合があると考えられる。
疑問:tRFと考えられるようなtRNAの部分配列のフラグメントが存在するとして、それは何らかの機構で生成されるのか、それとも単にtRNAが分解された産物なのか、本当に機能的役割を持っているのか。また、sRNA-SeqのRNA抽出やライブラリ調整の過程でtRNAが分解されたり、ある分解された断片が優先的に読まれてしまうような、人工的なバイアスはないのか。人工的な断片、自然にdegradateした断片、積極的に生成された断片などを想定して、分類することはできるのか。
参考:
Martinez (2018) RNA Biol 15, 170-175
Zhu et al. (2019) Cancer Lett 452, 31-37
Hirose et al. (2015) BMC Genet 16:83
Martinez et al. (2017) Nucleic Acids Res 45, 5142-5152
Kumar et al (2014) BMC Biol 12:78
Thompson et al (2018) Plant Cell Physiol 59, e1