2022年6月15日水曜日

ヒト遺伝子プールとミームプール

昨日、遺伝統計学のテキストを読んでいて、補講的な部分が興味深かった。文明の発展に伴って、ヒト集団は増大を続けている。これは、集団中に非常に頻度が低い突然変異が多数存在する状態になっていることを示唆している。人の数が増えるのだから突然変異の総数は増えるはずだ。一方、集団が膨張するということは、遺伝的浮動だけで対立遺伝子頻度が上昇し集団に固定するということが起こる可能性は、(一つ一つの変異にとって)とても小さくなっていく。こういった状態でヒト集団のゲノムにはどのような進化的力が働くのか?

有効集団サイズが大きくなるとき、遺伝的浮動の力は相対的に弱くなり、変異に対する自然淘汰の力が強くなることが考えられる。ただ、ヒト集団が他と異なるのは、医療や食生活、居住空間の発達のため、動物としてのヒトへの自然淘汰の力が弱くなっていることだという。

こうした中で自然淘汰が弱められると、有利な突然変異もなかなか頻度を挙げず、 有害突然変異だけが蓄積されているので、「遺伝子プールの劣化」が起こる可能性がある。稀なバリアントとして存在する突然変異が大量に集団の中にたゆたっているような状態だろうか。

ではこのまま快適状態が続けは、人類集団の遺伝子プールはどんどん悪くなっていくのだろうか?本の著者はCrow (1997)やLynch (2010)の見方に対して、WHOにより行われた天然痘根絶計画を例として挙げる。計画により実際には自然淘汰のコストを払わずに、抵抗性アレルが人類集団に固定したのとおなじ効果がもたらされたとし、もはや天然痘ウィルスへの抵抗性という点で言えば「支払いは猶予ではなく完全に免除されたのだ」と記している。

人類は残酷な自然淘汰のコスト(適応的でないアレルの除去、これは該当するアレルを持つ人が淘汰されることを意味するだろう)を払わずに、「ミーム」として人類に有益な情報を伝達することで、様々な(遺伝子プールに対する)自然淘汰の圧力を無効にしながら人類集団(あるいは現代社会)を存続させているのだろうか。遺伝子プールと並び立ち、相互作用するような「ミームプール」を想定するとき、従来の遺伝子プールの劣化の議論は成り立たなくなるのかもしれない(原文 2019/12/12. 修正2022/6/15)。

追記:パンデミック後に再考する(2022.6.15)

元の文章を初めて書いたのは19年の12月だった。その後年末から20年初めにかけて世界的に急速な動きが生じた。新型コロナウィルスのパンデミックが起き、それがモデルナやファイザーといった製薬企業が開発したワクチンによって(少なくとも先進国において)制圧されていく様子をリアルタイムに経験した。まさに、ミームプールにライフサイエンスの成果が急速に広がったことになると思う。

テキストの著者は、11.3 その他の問題(p238)で、
「人類は長期にわたる定常小集団としての歴史を反映した低い遺伝的多様性しかもたない反面、最近の人口増加は感染症の流行の可能性を増加させている。人口密度の低い過去にはエンデミックであった感染症が、パンデミックを起こす危険性は無視できない。このような問題は、人類集団の遺伝的多様性の側面から、定量的に議論される価値があるだろう。」
と記している。

新型コロナウィルスと人類集団の遺伝的多様性については、GWASを用いた研究など、多数の発表がなされていると思う。これらの研究成果については、今後の新たな感染症の流行も考えられるなか、科学や医療の世界にとどまらずに広く市井で共有され議論されるのが望ましいのではないか。


Reference

Tamiya, Ueki, Komori (2015) Genetic Statistics in Genomic medicine

2021年5月7日金曜日

References of Ubuntu 20.04 Installation

Description 

Ubuntuマシンを使いたくなり、久しぶりにLinuxのクリーンインストールを実施した。手法の詳細は様々な情報があるので、差し当たり自分が使用した情報のreferenceを覚書として記録した。


References

ubuntu.jp

  1. https://www.ubuntulinux.jp

ブートUSB作成(Mac)

  1. https://sy-base.com/myrobotics/mac/ubuntu_bootusb/

ubuntu 日本語Remixダウンロードサイト

  1. https://www.ubuntulinux.jp/download

インストール情報

  1. https://linuxfan.info/ubuntu-20-04-install-guide#google_vignette

日本語入力変換

  1. https://linuxfan.info/ubuntu-18-04-japanese-input

解像度問題〜NVIDIA gpu  driver更新

  1. https://ayatansnl.hatenablog.com/entry/2016/03/02/190055
  2. https://zenn.dev/190ikp/articles/how_to_install_nvidia_drivers
  3. https://qiita.com/kenji-miyake/items/06b8c3807bef0ba5c451#nvidia-driver-のインストール
  4. https://hibiki-press.tech/dev-env/ubuntu/add-ppa/4640
  5. https://qiita.com/ksasaki/items/b20a785e1a0f610efa08
  6. https://k-hyoda.hatenablog.com/entry/2020/07/09/223907
  7. https://linuxconfig.org/how-to-install-the-nvidia-drivers-on-ubuntu-20-04-focal-fossa-linux

IPアドレス確認

  1. https://news.mynavi.jp/article/20190825-883094/

SSHインストールと接続

  1. https://codechacha.com/ja/ubuntu-install-openssh/
HDD, SSDマウント確認
  1. アプリケーション:「ディスク」で確認できる。マウントポイントも見れる。ここでマウントポイントの書き換えも可能らしい
  2. コマンドラインで見るときはfdiskで確認できる
  3. sudo disk -l
  4. ファイルシステムの確認は、lsblk -f
  5. マウントポイントは/media/<my_dir>/<UUID>になっていた。UUIDが長いので、この「ディスク」アプリケーションを使って書き換えることもできそう。

解析用プログラム、アプリケーション準備
  1. Atom
  2. Anaconda3 (Jupyter, Spyder)
  3. R
  4. RStudio
  5. R package各種






2020年7月18日土曜日

次世代加速器の記事 (雑感)

昨年度読んだSFでとても面白かったのが、中国のSF作家劉慈欣が書いた「三体」だった。三体は三部作で、第一作の三体 I は前評判も高く新聞の広告とかにも結構大きく載っていたので興味を持って読んでみたが、とても面白いSFだった。現在は第二部の翻訳が6月に出たところだ。第一部を読み終わった時点では日本語訳はまだ出ていなかったので、英語翻訳版 (The dark forest) を購入して春先くらいに読んだ。一部目に続いて壮大なスケールで展開されるお話だった。今は、第三部(Death's end) を暇を見つけて読んでいる。第二部の日本語翻訳版も読んでみたい。

三体のストーリーの中で、「人類の科学の進歩」が重要なキーワードになっている。その中でも「人類の基礎科学のレベルが上がること」を危惧した三体星人により、量子物理学で使われる加速器の結果をでたらめにして無効化してしまう「智子(sophon)」が地球に送り込まれる。作品では、物理学などの基礎科学が文明の発展にいかに重要か、それをめぐる地球人と三体人との攻防が描かれている。なんとなく中国の人たちの科学感や期待が感じられるような気がする設定だと思った。

科学技術レベルが国の覇権にとって重要なのは確かだ。そして、現実世界では基礎科学でも欧米や日本が中国にいづれ追い付かれ追い越されていくであろうことを予感させるような話が出てきている。

先端科学 中国先行に危惧
欧米「日本で次世代加速器建設を」 8000億円、日本は負担懸念
日本経済新聞 朝刊

生命科学の分野でも日本は中国に急速に追い上げられ、一部ではすでに劣後しつつあるのではないかと思う。もちろん基礎科学は文化的な側面もあり、これまで培われてきた欧米の科学研究の風土がなくなってしまうわけではないと思う。しかし、あらゆる分野で覇権を握ろうという意思があり、予算的なバックアップをしている中国に、今後はいろんな分野で追いつき追い越されていくのかもしれない。

日本で科学技術に関係した職についており、日本の科学研究の上での地位が低下していくことに、危機感と寂しさを感じるのは否定できない。だが、一方では、こうした地位の逆転は今までにも度々起こってきたことなのだろうし、人類の科学そのものの停滞を意味するわけではないだろう。日本はただ沈んでいくのではなく、これまでの遺産を生かしながら、科学研究の世界でそれなりの地位を守っていくことを真剣に考えないといけない時期かもしれない。