何かの記事で、プロジェクトマネジメントの手法として使われる時間管理術の一つである、timeboxingという考え方を知った。ある決まった時間を一つのタスク、活動に当てるやり方らしい。締め切りのなし崩し的な遅れや、それに伴う人的資源の逐次投入を防ぐ役割がある(みたい)。個人の時間管理術としても用いられていて、完璧主義的な傾向を抑え、時間内に物事を終わらせるプレッシャーをかけながら作業することが良い結果につながるようだ。
Lifehackerにはこの変種版的な、location boxing という考え方が紹介されていた。こちらは、作業によって場所(オフィス、喫茶店、作業場、など)ことで、集中力を増し作業効率を上げる効果があると紹介されている。
研究に関係する似たようなtipsとして、毎日一定時間論文を書く時間を作る、というのはよく聞く。論文を書くのは面倒だったり苦しかったりすることもあり自然と後回しにされがちだが、研究の仕事は論文が受理されて出版されない限り完結しない。執筆から逃げてしまわないために、毎日決まった時間帯に30分なり1時間なり時間を決めて論文を書くことに使う(なかなか進まなくてもとりあえずその時間にはファイルを開いて論文を書くことにする)というのは、良い方法だし効果があると思う。自分は、昨年に受理された3報の論文ではこのやり方を取り入れた(ただ、最終的に徹夜して一気に書いて完成させることが多かった)。今査読されている論文は、2週間のあいだ、午後の時間を使って書いていって原稿を準備した。
作家の村上春樹が昔からエッセイで、決まった時間にタイプライターの前に座って時間が来るまで仕事して、時間が来たら筆が乗ってるかどうかに関係なくその日の仕事をおしまいにする、といった趣旨のことを書いていたと思う。これもちょっと先述の論文の書き方に似ているなと思った。何にでも、リズムを作るのは大事なのかもしれないし、決まった時間に継続して作業することで、その時間に書く準備が自分の中に整ってくるのかもしれない。
ちょっと儀式めいた作業にする、というのも何かの意味があるのかもしれない。隙間の時間にその都度論文を書くことに集中できればいいのだろうが、なかなか難しいように感じる。その作業をするにはそれに適した作業の始め方やリズムみたいなものはあるんだろう。
学生の頃の記憶で思い出したのは、違う研究室の先生が、だいたい決まった時間に大きな辞書か辞典のようなものを持って図書館に通って、研究の何かの作業をされていたことだ。人づてに聞いたところによると、学生に邪魔されずに集中する時間を作るため、とのことだった。確かに集中しようとしている時に質問などで中断するのは効率がだいぶ落ちると思う。
ロケーションボクシングの例としては、他にも三島には論文の原稿を抱えた教授が何人か出没するファミレスがある、という話を聞いた。遺伝研の先生たちは、大学よりかは雑務が少ないし静かな研究環境だと思うけれど、集中して論文を推敲したいときは、どこかに場所を移して人に邪魔されずに作業するのだろう。
大学には、割とロケーションボクシングに適した場所がある。第一は図書館だ。大抵静かだし空いている。あと、あの物量として本がたくさんある中にいるのは、何かに集中するのには良い場所だと思う。あと、今風のキャンパスにはラーニングコモンズ的なスペースがあることも多い。ただ、何度か試してみたが自分には向いていなかった。
自分も少しタイムボクシング、ロケーションボクシング的なことを自然と取り入れている。帰る前に1時間程度図書館によることがある。ここでは、研究で進めていることの続きではなく、紙ベースで論文を読んだり、ノートに書きながらやる演習的なことをすることが多い。家では、メインではないプロジェクトの解析を自由研究的にやることが多い。これは、時間を区切ってプロジェクトに従事する例だと思う。